フィリッパさんのウールや毛糸についてはこちら

彼女のプロジェクトに共感するし、彼女の作り出す毛糸もすごく好き。彼女自身が言うようにポルトガルの羊毛は使い手がいなくなり、価値もなくなってしまった。だから羊を飼う農家の人達は刈り取った毛を燃やしてしまう。その状況を彼女は変えようとしている。それを知って私はもっと彼女の事や彼女のプロジェクトについて知りたいと思い、気になる事を聞いてみました。


FEP      - 編み物の何が好き?
Filipa   - 子供の頃に編み物を始めて以来、編む事はずっと好き。編み物の何が良いかというと自分にぴったりの特別な洋服を作れる事。編み物で飾りを作るだけじゃなくて、スカーフも作ったしセーターやコートも編んだけれど、どれも好きなだけユニークでカラフルな物を作れました。 

             - 羊毛の何が好き?

              - ウールは素晴らしくシンプルで有能な素材です。太古の昔から使われているしほとんどどこでも手に入る。それに再生可能素材です。私はいつもウールの衣服は最高だと思っています。良質のウールのセーターは一生使えて次世代へつがれても新品のように見えるけれど、化学合成のウールはそうはいかない。でもウールが好きな理由は何よりもとても便利なところ。ウールを使って洋服はもちろん、コーサーや敷物などの家庭用品も作れるし建物の断熱材にもなります。



             - ポルトガルの羊毛のユニークな特性はどんなところ?
             - ポルトガルの羊毛の一番良い所は多くの種類がある事。羊が飼われている土地の範囲は小さいけれど、羊の種類はさまざまです。だから色んな異なる羊毛の質感に出合える。それぞれの異なる特質によって伝統的な技術や使い方があって、それに合わせて多様な新しい作品を作り出す事が出来ます。これらのユニークは羊達に出合えるのはポルトガルだけで、他の土地では出合うことができません。それにポルトガルの気候にうまい具合に順応してそれぞれの地域の持続的農業を構成するのにとても重要な役割を果たしています。


             - ポルトガルではなぜ羊毛は使えないもの、価値のない物と思われていましたか?まだ人々はそう思っていますか?
​              - ポルトガルの羊毛の価値低下が始まったのはそんなに前の事でないけれど、とても深いところまで行ってしまいました。20世紀後半のポルトガルは大きな変化をくぐり抜けてきました。本来の社会的流動性がほとんど無い農業社会から自由主義の都市化民主主義に変わっていきました。生活基準は上昇して教育機会も一気に変化した。この変化の過程の中でそれまで伝統的で主要経済だった農業産業にある傷を作り出しました。今の世代の人々にとってはウールは貧困を連想するもので女性の家庭生活、教育不足、他国からの孤立を意味するものとされています。とくに教育を受けられなく他の社会からも孤立しがちな羊毛産業に関わる人達の経済的状況に深く関わっているのが現実です。ポルトガルでは自国の羊毛が超低価格で買われるため、売り手にはいくらも残らない。私が話を聞いた北部の人たちは1キロのウールあたり平均でたったの40ペンス(約40円)しかもらえないそうです。ウールを輸送するコストも削減するために沢山の農家ではウールを燃やしてしまいます。ポルトガルの羊毛を販売して利益を出すのは不可能なのです。ほとんどの場合、羊毛生産者は一人の仲介者にウールを売ります。そしてその仲介者がウール品製造者へ販売します。そのために農家や羊毛生産者は最終的なウール使用者、販売会社について全く分からないままなのです。農村で生活する人たちに届く情報は少なくは知識も乏しいので生産者が 本当のウールの価値を見いだして直接販売をしようとする人たちがいないのです。


             - 現在までポルトガル羊毛の使われ方をどのように変化させてきたと思いますか?
              - 2011年に私はカナダのバンクーバーへ留学しに行き、そこで毛糸を自分で紡いで作る事を学びました。羊から刈られたままの生のウールを何の機械を使わずに毛糸に仕上げられることに気づきました。そしてその年、私の出身地の近所の人や農家から生のウールをいくつか買い取りました。次第に私の手元には沢山の のウールが集まるようになり、これを商品として販売するお店を開く事を思いつきました。それはどれだけの人がポルトガルのウールに興味をもつか試すいい機会でもあると思ったのです。
それから3年が経ち、ポルトガルのウールの知名度は上がり人々が感じるウールの価値も良い方向に変化してきているのが明らかな分かります。未だにウール生産者にポルトガルのウールの本当の価値を分かってもらい、彼らが直接販売をするべきだと伝えるのは難しいですが、ポルトガル国内では自国の毛糸を使い始めている毛糸生産者、編み物生産者、ファイバー作家たちが増えています。その他にもチリ、イタリア、そしてカナダといった他国の作家さんたちと話をしますが、どの方もポルトガルのウールの良さやテキスタイル商品の良さを知り、そのユニークな質感に興味を持ち私のウールを購入してくれています


              - 扱っている羊毛について説明してください? 
               - 主に2種類の羊毛を扱ってきました。一つはポルトガルのメリノ羊でコインブラの近くの農家から来ます。メリノ羊毛は柔らかく伸びも良く、弾力性があります。セーターには最適ですし、靴下やスカーフのように肌に触れるガーメント作りに適しています。もう一つの種類は粗めの毛が育つシュラガレガ系の羊で、私の半分の家族が住むポルトガルの最北地で飼われています。この地域はトラスオズモンテス(Trás-os-Montes)という名前でとても耐久性のある丈夫な毛がとれる羊がたくさんいます。私はシュラガレガ・ミランデサという羊の毛を使った事がありますが、この種類は光沢の良い毛で有名で昔から冬季の着物やコートのような固めの製品作りに適しています。現在私が紡いで毛糸作りをしているものはシュラガレガ・ブラガンサナという毛の短い種類で、伝統的なチーズ生産者から買い取った物です。この羊は主に食肉用で飼われ良質の肉で有名ですが、美味しいチーズも作れるし羊毛はブランケット作りにも適しているのでとても優れた役に立つ羊です。この羊毛は初めは少し肌触りがチクチクしますが、使ったり洗ったりしていくうちに柔らかくなっていきます。メリノ羊毛よりも優れた耐性を持ち長持ちするカーペットやコートやブランケットが作れます。私は特に濃い色の物と白色の両方のブラガンサナ羊毛を扱っていて、この2種類を組み合わせて使って楽しんでいます。

             
             - このプロジェクトの目指すところは? 
              - フライングフリース(The Flying Fleece)はポルトガル産の羊毛について再度考え直し、国内でも海外でのその豊富で良質なウールを繁栄させてその価値を広げることです。自分の編み物製作にも私のショップで販売する羊毛を使っています。(作った物はフェイスブックやブログにも載せています。)主なアイデアは羊毛の使い方をシンプルなものに保つこと。それによって他の毛糸には無い、ポルトガル羊毛独自の素朴で本当の質感を引き出すことができると思っています。

2014年11月

100% メリノ羊毛で編んだシャツ

自身で毛糸を紡ぐようになったのは最近の事で彼女の持つポルトガルの羊毛コレクションは大きくなりつづけている

彼女の目指す物はアメリカで出合った編み物のヒッピーな新しい文化とポルトガルで忘れ去られている自国の羊毛に関わる伝統的な技術とそのユニークな素材をうまく組み合わせることだそう。

チュラミランデサという羊の毛

メリノという羊の毛でブラックベリーで染色

ブラックベリーとイチジクで染色したメリノ羊毛

オリーブの葉っぱで染色されたメリノ羊毛

写真に写る素敵なカーディガンはもちろん彼女自身が 編んだ物。
使われているウールは 彼女の出身地の農家から買い取り、自身が紡いで染色をしたもの。昔の人がやっていたように、全て手作り。
フィリッパはポルトガルの北部のコインブラ出身。現在はアメリカのミシガンで哲学を学びながら教えてもいる。
ポルトガルの羊毛を集めてそのままの状態で販売をしている。洗っただけで他には何も手をつけていない自然の羊毛もあるが、 森や林で見つかるような自然製品を使って染色もしている。
染色に使われるのはブラックベリー、タマネギの皮、オリーブ、そしてイチジクなど。
彼女の羊毛の買い手のほとんどはファイバーアーティスト達だそう。

手で紡いだメリノ羊毛とそれで編んだ物

​Filipa Melo Lopes

​"Flying Fleece" オーナー/ファイバーアート/編み物/羊毛紡ぎ手/大学教授/哲学者